市営バス事業の収支改善について

公開日 2025.10.01

皆さん、こんにちは。

高槻市交通部長の田中です。

 

記録的な猛暑から、ようやく朝晩は特に秋の気配を感じるようになってきましたが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

 

今回の「こちら部長室」では、「市営バス事業の収支改善について」、お話ししたいと思います。

 

コロナ禍以降、食料品等の生活必需品やガソリン等、多くの物が値上がりしており、ジワジワと生活が苦しくなっていることを実感しているのは私だけではないと思います。

 

一方で、海外に目を向けると、例えばアメリカではハンバーガーが数千円するなど、日本よりも数段上の物価高が進んでいるようです。

 

このように値上げの理由や程度は様々あるものの、私たちの収入も比例して増えれば問題ないということになりますが、それが追い付いていないことが社会問題となっています。

 

しかし、昨年に引き続き、今年の春闘でも大企業を中心に大幅な賃上げが行われており、徐々にではありますが収入も増える傾向です。

バスのハンドルの写真

一方で、皆さんも一度くらいは耳にしたことがあると思いますが、バス事業では「2024年問題」で運転士が足りないという状況に置かれています。

 

「2024年問題」の詳細はこのコーナーでも紹介しましたが、簡単に言うと、運輸業界全体の労働条件を改善するため、運転士の労働時間や休息時間を規制している法律を見直そうというものです。

 

しかし、労働時間の改善だけで運転士不足が解消されるのであればよいのですが、やはり、給料が増えなければ魅力ある職業にはなりません。

 

市営バスでも既に、運転士の給料の改善に取り組んでいますが、それも企業としての収入が確保できなければできません。

 

それではその原資をどこから生み出すのかということになります。

 

そこで現在、多くの交通事業者が実践しているのが「運賃改定」、いわゆる値上げということになります。

 

この値上げの波は民間の交通事業者だけでなく、多くの公営交通でも行われています。

 

高槻市営バスが置かれている状況ですが、ここ数年はコロナ禍で赤字が続いてきましたが、様々な経営改善の結果、令和5年度は黒字を達成しました。

 

しかし、令和6年度はそれらを上回る諸物価及び人件費高騰の影響で、赤字の見込みとなっています。

 

更に今後は、次世代バスや安全装置の導入、DX化やキャッシュレス化の推進など、多額の投資が必要な状況であり、前述の適正な運転士数を確保するための更なる人件費の増加も相まって、大変厳しい収支状況になると見込んでいます。

芝生車庫の写真

このような中、市営バスでは、「自動車運送事業審議会」に対して「市営バス事業の収支改善」について諮問し、それに対する答申書をいただきました。

 

この答申書は、市営バス事業を取り巻く社会環境の変化等、多岐に渡る内容となっていますが、要点は「収支均衡を図る手段として、受益者負担の原則から運賃改定(値上げ)も必然的でありやむを得ない。」「今後は、物価上昇などの社会経済状況の変化に対応し、適宜、適切な時期に運賃を見直す必要がある。」となっています。

 

答申書の詳細は市営バスHP内に掲載していますので、興味のある方はご覧ください。

市営バスの経営状況について

 

この答申を踏まえて市営バスでは、市民生活への影響を意識しつつ、市民に身近な市営バスとして事業が継続できるよう、運賃改定も視野に入れた収支改善に係る方策を検討する方針ですが、公共交通の値上げは市民生活に与える影響が大きく、簡単にできるものではないと考えています。

 

しかし、それを躊躇して市営バス事業が続けられなくなるなど、取り返しのつかない状況になってしまうことは避けなければならず、判断が非常に難しいものとなります。

 

このように、運賃改定の実施については慎重に検討しますが、他市に誇れる市営バス事業を未来に向けて維持していくためには、何より市営バスをご利用いただくことが重要となりますので、引き続き、ご利用をお待ちしています。

プロフィール

田中 宏和

1972年(昭和47年)兵庫県出身。
2023年(令和5年)から現職。