第3回 女性バスドライバーを増やすには:大学生によるグループワークから

2021.09.01

毛海 千佳子高槻市自動車運送事業審議会委員、近畿大学経営学部准教授

高槻市営女性ドライバー

私の担当する3年生のゼミでは、毎年、社会課題解決を目指して少人数制のグループワークが行われています。昨年実施のテーマの1つに、女子学生による「女性バスドライバーを増やすには」がありました。

このテーマの背景には、バス運転士の人手不足があります。近年、多くのサービス現場では労働力不足が問題となっています。これはサービスの質の低下、さらにはサービス停止につながるため非常に深刻な問題です。長期予測では、生産年齢人口は確実に減少するためこの問題は避けられません。新たな労働の担い手として、潜在的労働力である高齢者、女性、外国人の方々に期待する部分が大きいです。

しかしバス運転士の場合、高齢者雇用には安全面から限界がありますし、外国人運転士は国の制度等で、現状、その確保が難しい状況です。そこで女性運転士の活躍に熱い期待が高まります。

学生の意見で一致していたものは、労働環境の議論以前に「運転士という職業選択が全くなかった」ということでした。このことはそもそも「女性が運転士として働くイメージがない」ためであり、それならば「イメージ向上が大切ではないか」などの議論が行われました。しかし、大学内での学生のみの議論では説得性が得にくい状況でした。

インタビューの様子

現在、高槻市営バスでは、3名の女性運転士が活躍しています。
そのため、高槻市交通部のご協力から、彼女たちにインタビュー調査をする機会を頂きました。彼女たちに共通していた点は、大型車の運転が好きで、昔からバス運転士になりたいと思っていたということです。そのため運転士の条件である大型二種免許を、職員になる以前から取得されていました。実際に女性運転士として働くことは、女性ならではの気づきや苦労もあることが分かりました。特にインタビューでは、生まれ育った高槻市で走りたいという思いや、お客様に気持ちよく乗車してもらおうと常に心がけていること、また、感謝されることがやりがいにつながることなどを率直に話して頂いたことが好印象として残っています。是非、市民の方々も運転士に感謝の気持ちを伝えてください!

インタビューの様子

さて、学生は調査内容をもとにキャリア教育の重要性を再認識し、先行研究調査から、小・中・高校時の多様な職業体験の提供と、“実際に女性も活躍している”というイメージの定着が重要である、という結論へと導きました。特に女子学生の場合、中学時代のキャリア教育の影響が強いという研究結果もみつけたようです。確かにインタビュー中に1人の運転士の方が、大型車を運転する女性をみて憧れを抱いた経験を話してくださったことがこの結論とも一致します。

このようなグループワークは、学生にとって実社会からの生きた知識を得ることにもつながり、何よりも地域の課題に自分事として考えるきっかけともなります。将来、社会で活躍できる人材育成のために、このような取り組みを今後も大切にしていきたいです。

プロフィール

毛海千佳子先生プロフィール写真

毛海 千佳子(けうみ ちかこ)
近畿大学経営学部准教授。専門は交通論。大学ではサービスマネジメント論、サービス産業論などを担当。高槻市営バスの審議会委員やアドバイザーを歴任し、2019年からは高槻市自動車運送事業審議会委員を務めている。

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